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Tシャツを売らないTシャツ屋が作ったTシャツ ②〜制作編〜

ほんの少し欠けたピースを埋めるような気持ちから、Tシャツを売らないTシャツ屋は22年ぶりに納得のいくものを作ってみようと言うことになりました。
納得のいくもの、どうしても譲れないこだわりが入ったもの、
私の好きな80年代、90年代に作られたロックTシャツっぽい雰囲気のものを作るということです。
昨今のヴィンテージ、ロックTシャツ人気もあって、ハイ・ブランドがわざとダメージ加工を施したTシャツを何万円と言う価格で販売するようなこともありますが、流石にそれをやろうというわけではありません。

例えば、私のようにプリントのデザインを考えて、それをプリント工場へ依頼し商品化する方法を取ると、Tシャツの販売価格以下1)~6)の要素で決まります。

 

<p  1)Tシャツのボデイ(プリントの地になるTシャツそのもの)
2)プリント方法
3)何色の色を使うか(プリント方法に依存して)
4)プリントの場所と大きさ
5)販売にかかる手数料等
6)利益分

 

1)~4)は商品の原価になり、この要素で商品としてのTシャツのクオリティが決まります。
5)はネットショップのサイトへの支払いになるので、大体商品価格の1割強になります。
1)~5)の要素はいくら売ってもいわゆる『もうけ』にはならない部分となります。

先にも述べたように、
今回Tシャツを作るにあたって、どうしても譲れないこだわりがありました。
それにはTシャツのボデイとプリントの方法が関わるわけです。Tシャツのボデイの色、プリントの方法は最初から決めてそこに対しては譲らないことになるのです。

 

『Tシャツのボデイ(黒いロックTシャツでいい感じになってきている色の)』

ただの真っ黒ではなく、黒いTシャツが長年着用されて生地の端や縫い目に当たりがでてそこの色がおちたり、
天日で干されることで焼けがでているような感じの色、その色はロックバー『Upset the Apple-Cart』のカウンターや椅子の鈍い黒鉄色のイメージにシンクロします。
かといって、最初から何年もかけて色落ち日焼けしたTシャツのボデイが売っているわけではないので、そこはそういう発色生地のTシャツボデイを扱うメーカーのものに限られました。
もちろん、真っ黒はだいたいどこのボデイメーカーも扱っていますが、色落ち日焼け黒鉄色のボデイを扱っているところは….日本製で1社あります。
ボデイはそのメーカ一択で決まりましたが、日本製ということもあり、最安値ではありません。

 

『プリントの方法』

これも、長年愛用した80年代、90年代のロックTシャツを持っていらっしゃる方ならわかっていただけると思うのですが、プリント部分が劣化し割れたり剥がれたりという箇所が出てきているはずです。
この状態になるには『染める』ようにプリントしたものではなく、Tシャツの生地に厚めのインクをべったりと『乗せる』よううにプリントしたものでなくてはならないのです。
このテイストでプリントするにはシルクスクリーンという方法を選ぶことになります。
このシルクスクリーンというのは『The Velvet Underground and Nico』のアルバムで有名なアンディ・ウォーホールのバナナの画がこの方法で描かれていますので、ああいったものを想像していただけるといいかと思います。
あれは黄色と黒の二色で表現されていますが、黄色の部分を一つの版、黒の部分を一つの版としてそれぞれの版で、先ず黄色の版でプリント、そこに黒に版を重ねてプリントというように二色を重ねることであの「バナナの絵」になるわけです。
よって、使用する色数=版の数になり、色の数も版の数もそのままコストに影響します
1色1版が2色2版になると、コストは単純に倍かかってしまうわけです。

そこで、ロックバー『Upset the Apple-Cart』のロゴを見ると使用されている色は赤、黒、白、黄とゴールド、
なんと5色も使われている!
ゴールドのインクなんか使おうものなら価格が一気に跳ね上がることになるので、そこは代替して、何とかTシャツのボデイの黒はそのまま使って4色、4版で見積りとイメージデータの作成を依頼しました。

 

結果、見積金額は50,000円弱、プリント業者で作られたプリントのイメージ画像を見ると….全く私が作った指示書のイメージとは違うものではありませんか?!驚いて、先方へ連絡することになったのです。
因みにお店の看板の写真とデザイン指示書を付けているにも関わらず、全然違う配色だったので、もしかしたら自分がパラレルワールドかトワイライトゾーンに入ってしまったと思うくらいでした。
再度、配色を細かに指示してイメージを作り直してもらいます。そして何とか指示通りのイメージ画像が出来上がって来たのですが、今度は何故か見積額が1万円アップしてます。
そこも何の説明もなかったので、また、慌てて問い合わせると、
「前回のイメージは3色(3版)で、今回は4色(4版)になるので」とのこと。
う~む、コレはちょっと雲行きが怪しい感じになってきたぞ、
という感じで、流石に6万円近い原資になるとそれを捻出することが難しい、
どうしたものかと思って最初のトワイライトゾーンから来たイメージ画と指示通りのイメージ画、全く異なるイメージ画を並べてボーッと考えていたわけです。
因みに、トワイライトゾーンのイメージ画は『Upset the Apple-Cart』の看板の赤い部分がごっそり抜け落ちているため、全く別の者にしか見えないのです….
「ん?」
ボーッと見てるとこれはこれでアリという気がしてきました。
お店の黒鉄の椅子には四角い赤いシートが着いていますが、これは座ると隠れて見えなくなります。
満席になれば赤い部分は消えてなくなるのです。
私は指示通りのイメージ画から赤を抜いて、文字の配色を変更してみました。
すると4色刷りのイメージからもの凄くシンプルでクリアな感じになりました。
シンプルになったところに文字を加えてみました。
主役とも言えるイメージカラーの赤を抜いて、少し別のエフェクトを加える
それは、ちょっとダブ・ミュージックのような感じでもありましたし、そのまんまを作るよりも海賊版ぽくもありました。
怪我の功名、塞翁が馬、ということで、業者にイメージの清書と確定見積を依頼しました。
(まぁそれでも些細なことがありましたが)なんとか予算内で制作の目途がたったという感じでした。

名付けて、ロックTシャツ『Upset The Apple-Cart』dub mix ver.いよいよ制作です。

 

To Be Continued→

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